ハトネコエの人事・採用ブログ

人事や組織関連の話で、読んだこと・考えたこと・聞いたこと等々

スカウトメッセージがテンプレだと、候補者の心に響かないどころかマイナスなワケ

LAPRASさんのこちらの記事が素晴らしいので、上の記事を読んでもらえればいいのですが、
時おり来るテンプレメッセージを見るたび、私の言葉としても書いておきたいな、と思いましたので書いておきます。

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テンプレメッセージとは

こういうものを言います。

xx xx さん
はじめまして。xxx株式会社採用担当の xx と申します!

プロフィールを拝見し、エンジニアとしての高いスキルをお持ちであることから、  
現在の弊社にふさわしい人材であると考え、お声がけさせていただきました。

私たちは、20xx年xx月に創業し、○○や××などの事業を展開しております。  
<会社説明が続く>

まずは情報交換からでも構いません。
一度ざっくばらんにお話させて頂ければと思います。

ご返信をお待ちしております。

xxx株式会社 採用担当 xx

覚えておいてほしい言葉があります。

スカウトメッセージはラブレターです。

このメッセージはラブレターで言うところの「好きです! 付き合ってください!」にあたります。
シンプルでいいですね。

このメッセージが刺さる場合も、もちろんあると思います。

しかし、とある場合を考えてみてください。

もしも、相手が毎日のようにラブレターをいろんな人からもらうクラスの人気者だったら・・・。

エンジニアは意外とラブレターをもらっている

エンジニアは転職市場ではけっこうな人気者でラブレターを多くもらっています。

その数はすさまじく、頻度が多かったときは Wantedly だけで平日毎日1通もらうくらいでした。
LinkedIn や Green など他媒体も使っている人はもっと多いことでしょう。

もう、そうなってくると全部の会社の人と話したくても話せないレベルになってくるわけで、
どうしても選別しないといけなくなります。

そうなったときに切り捨てられがちなのは、シンプルなラブレターです。

「まあ、この文面なら、他の人にも同じの送ってるんでしょ? 別に本気じゃないんでしょ?」

と思われておしまいなわけです。

あと私の場合は人事系の人間なので、
「今どきスカウトメッセージをカスタマイズするというのは常識なのに、それをしない人事の人って……」って感じで、
会社自体の評価が下がっちゃったりします。……いや、これは特殊な例なので置いておきましょう(笑)

シンプルなラブレターの弊害

このように、成約率を下げてしまうシンプルなラブレターですが、もう1つの大きな損害があります。

送る相手がいなくなるのです。

基本的に、同じ相手にもう1度スカウトメッセージを送るのは心情的におこないにくいし、
社内で作っているアタックリストに「アタック済み」なんて書かれるので、
スカウトを送る相手を Wantedly の広大な海の中から新たに探すことになっていくのですが、
繰り返していくうちに「もう、送る相手がいない……」状態になります。マジでなります。

アタック済みでない優秀なエンジニアを Wantedly から探すというのは、
採用担当の時間と心を大きく消耗させます。

「スカウトメッセージに時間をかけられない」なんて声を聞くことがありますが、
上のようなことを考えると、数打ちゃ当たる戦法よりもスカウトメッセージにこだわるほうが、
結果的に時間の節約になります。

いいスカウトメッセージとは

方針としては、
「あなたのことをいろいろ調べたんだけど、○○とかしてるの最高ですよね! 大好き! あなたが興味ある○○って私も大好きだから、もしかしたら私たちって気が合うかもね? ねえ、もっとあなたのこと知りたいから、お試しで付き合ってみない? もし私と付き合ってくれたら○○してあげちゃうのにな~」
っていう、ヤンデレ的なラブレターです。

ラブレターで考えたらかなりヤンデレでしたが(笑)、方針はこんな感じです。
相手にとっての都合の良さは意識しつつも、「嘘は書かない」というのは徹底しましょう。
(本来空いていない/作っていないポジションに就けるかのように匂わせるなどは当然NG)

例を書いてみます。

xx xx さん、はじめまして! xxx株式会社採用担当の xx です。

Wantedly のプロフィールを読ませていただきました!

Railsエンジニアとしての経験もさることながら、  
ビジネスサイドへの関心が強く、  
Google Apps Script を用いた営業部の業務改善に貢献したという xx 社での経歴は、  
他部署との連携を大切にしている xx さんのお人柄の良さを感じ、
ぜひ一度この方とお話してみたい! と、いてもたってもいられなくなりご連絡差し上げました。

ブログの方も拝見させていただきましたが、
上の業務改善について説明した『Google Apps Script で独自の関数を作成する』の記事は、
エンジニアでない方にもわかるように懇切丁寧に説明しようという気持ちを感じて、
xx さんの他人を思いやる気持ちを強く感じました。

弊社は2018年5月に設立したばかりのまだ若い会社で、
エンジニアも多くなく、まだプロダクトとしても発展途上で人の手によって大きくカバーしている現状です。
xx さんならば、技術の力に加えて他部署との連携力の強さを活かして、
プロダクトをフルスピードで改善してくださるのではないかと感じております。

以下に、弊社CEOの xx が目指しているビジョンについて述べたインタビュー記事がありますので、  
お忙しいとは思いますが、もしよろしければ一度読んでいただければと思います。  
医療についての熱い思いを語っています!  
https://nantoka-kantoka.example.com/interviews/12345

今は転職をご検討されていないかもしれませんが、
ぜひ xx さんと一度お話をしたく思っておりますので、弊社CEOと私でお話をする時間を設けていただけないでしょうか?

ご返信いただけますと、うれしく思います。
よろしくお願いいたします。

例えばこんな感じです。
Wantedly のプロフィールが充実していない人もいますので、
なかなかこう情報をぎっしりと書けることも多くはないと思いますが、情報があったらこのくらい詰め込んでみましょう。

以下、ポイントです。

  • 最初の挨拶は手短かに
  • 相手のプロフィールを徹底的に読んだことをアピール。上の例のように2つ書けると強いです。ブログがあったら、ある程度読んで、自分が言及できそうな記事を探しましょう
  • 自分語りは控えめに。自社の説明が、相手を褒める文章の文章量より少なくなるくらいがオススメです。
    興味を持ってもらえれば多少調べてくれると思うので、そこに期待しましょう。逆に言えば、Wantedlyの会社概要ページもしくはコーポレートサイトの採用ページは、自社の魅力が伝わるよう充実させておきましょう
  • 見てほしい記事URLは1つくらいに絞りましょう。あんまり多く貼ると、相手が記事を見るのにエネルギーを使ったり、めんどくさいと思われたりで、返信アクションまでにたどり着かない可能性があります。
    また、どんな内容の記事かや、どうしてそれがオススメなのかを頭出ししておくと、クリック率が多少上がるかと思います。
  • 『今は転職をご検討されていないかもしれませんが』は書いておくと、面談への心理的ハードルが下がるのでオススメです
  • 面接(カジュアル面談)に誰が出てくる予定なのか書いておきましょう。LAPRASさんの調査にあるように面談の場で CEO や CTO に会いたい方が多いので、あらかじめそれらの人に会えることを伝えておくと、返信率も上がると思います。
    なお、面談に出る人がスカウトメッセージを書くのが一番いいですし、面談の場でスカウトメッセージの内容について改めて振り返っておくと、候補者様からの印象は良くなると思います。少なくともどちらか片方はおこないましょう。

文章例を書きましたが、逆にみんながこれとおんなじような文章を書くと目に留まりづらくなるとも言えるので、
もし社内に協力してくれるエンジニアがいる場合は、
現在の傾向の調査のために、もらっている実際のスカウトを見せてもらって、
それを元に、基本を守りつつも、目につくスカウトメッセージは何か、という逆張りの精神も持っておくとよりグッドです!
(もっと言えばエンジニアにスカウト対象を探してもらって、スカウトメッセージを、書き方指導しつつ書いてもらえるとベスト)

すでにシンプルなラブレターをやってしまっている場合

上で、送る相手がいなくなると書いたシンプルなラブレターことテンプレメッセージですが、
まだ挽回のチャンスはあります!

2度メッセージを送ることがシステム上 出来ないわけではないので、
「前回のメッセージで伝わらなかったかもしれないけど、でも私、本気だから!」
という趣旨のメッセージを送ることで挽回を図りましょう。

xx xx さま

再度のご連絡になり、申し訳ありません。
前回のメッセージでは言葉が足りてないと思い、ご迷惑を承知で再度のご連絡を差し上げました。

xx さんはRailsエンジニアとしての経験もさることながら、  
ビジネスサイドへの関心が強く、  
Google Apps Script を用いた営業部の業務改善に貢献したという xx 社での経歴は、  
他部署との連携を大切にしている xx さんのお人柄の良さを感じ、
私どもとしましてはぜひ xx さんとお仕事をご一緒したいと思いました。

また、xx さんの書かれています『Google Apps Script で独自の関数を作成する』の記事は、
<以下略>

再度の連絡への謝りを入れたあとに、相手のどこがいいと思ったのかを書き始める、という手法です。
ただし、謝りから入ってしまっているぶん、文章としてはどうしても堅くならざるを得ないという欠点があります。

また、受け取る方としても、2度連絡をもらうのは、相手の本気度を多少感じる一方、
返答を催促されているように思えて多少イヤな気持ち(返信しにくい気持ち)になってしまいます。

そのようなデメリットがある一方、
テンプレメッセージを送ってから返答が来なくなってる状態よりかはマイナスにならないと思いますので、
やらないよりかは多少マシだと思います。

返答を催促してる文章に思われないようには充分に配慮しましょう。

結論:スカウトメッセージはファーストアプローチなので超大事

上の挽回の方法で触れました通り、
2通目となると気を遣うところも多く苦戦します。

スカウトメッセージは候補者様と会社との最初の接点になりえます。
そこで、相手にどれだけの好意を持ってもらえるかは大事なポイントです。

相手に関心を持ってもらえるスカウトメッセージが何かを考え、
「このスカウトメッセージで会社のファンを増やすぞ!」くらいの気持ちで取り組めると、
良い結果が付いてくるのではないかと思います。

会社のファンづくりの第一歩、がんばりましょう!


・・・丁寧なスカウトメッセージを書いてくださっているのに返信できていない企業様、申し訳ありません・・・かけてくださった時間に報いたく、できるだけ返信はおこないたく思っております。とても遅いレスポンスになるかもしれませんが、なるべくお返しできるよう、がんばります。