会社にとって 一番大事なもの ってなんでしょう?
間違いなく 採用 です!
ろくでもない人を雇うと、周りと衝突を起こしたりマネジメントコストが増えたり、
疲れて周りの人が辞めていったり……とまあ、ろくなことになりません。
そんなろくでもない人を部長職にでもしちゃおうものなら、
部単位でどんどん人が辞めていくし、ろくでもない部長がろくでもない人を入社させてしまうのでまあ簡単に会社が腐っていきます。
一人辞めると一人採用する必要があるわけで、それにかかるコストは
エージェントに支払う金額だけで 200 〜 300 万円ほど。(それ以外に掲載費用などもかかるわけですが)
会社の人材の質が下がるだけでなく実質的な費用もかかるので、
採用は本当に気をつけないと、すぐに大変なことになっていきます。
(そういえば昨年こんな記事を書きました)
0. Hacking HR! #2 に参加したよ
さて、前置きが長くなりましたが、
そんな採用に関するおもしろそうな勉強会を発見し、参加してきました。
Hacking HR! #2 です。
スタートアップ企業の人事の勉強会で、特に採用に関してのテーマでやっているようです。
今回のテーマは『実録!「採用」業務の失敗談』
いいですね、このテーマだけであと5回くらいはできるんじゃないかって気がします。
会場は Repro さんです。
トイレにミューズ泡ハンドソープが置かれていて、
「わかるわ〜、ビル備え付けのハンドソープって全然泡立たないよね、置くよね」って思いました。
(私の勤めてる会社にも置いてある)
【医薬部外品】ミューズ 泡 ハンドソープ オリジナル 本体ボトル 250ml 殺菌 消毒 手洗い 保湿成分配合
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1. scouty 伊藤さん (@tetsuyaito_2)
「合否判断が分かれて気付いた! 採用要件の明確化がもたらした2つの価値」
トップバッターは最近サービスが正式リリースを果たしました scouty さん。
(今までのってオープンβ版だったんですね)
scouty さんは 3〜4ヶ月前にお話を聞きに行ったばかりで、おもしろい人事制度をしているな〜と感じている企業さんです。
まさにこのイベントタイトルの「Hacking HR!」って会社ですね。
そんな scouty さんで起こったのが、営業を雇うにあたって
メンバー間で判断が分かれたこと。
じゃあどうしたかと言うと、採用基準をもっと明確化しました。
超詳細な採用基準 です。
「なになにをこうやったことある」「こういう環境でこれをやったことある」といったファクトベースに基づいた、
解釈が人によって分かれないような採用基準を、
細かく細かく超詳細に落とし込んだそうです。(その項目リスト見てみたいですね!)
その結果として、採用すべきかの判断にかかる時間を少なくすることができたばかりでなく、
リファーラル(知人採用)がおこなわれやすくなりました。
どういうことかと言うと、採用要件が非常に明確になっているぶん、
「じゃあこういう人が合うんだ」と社員も理解しやすいので、人を連れてきやすくなるということです。
結果、月におこなわれた50件の面談のうち、採用担当由来の面談は13件、
つまり 70% 近い 37 件がリファーラルを元とする面談となったそうです。マジで?! すごい。
なお、scouty さんは採用候補者と社員全員がご飯を囲むのですが、
その際、全社員が書くその人に関する判断のチェックシートも非常に細かく項目があるそうですよ。
2. ナーブ 大野さん
「5回転職し6社で採用に関わって感じた、採用を失敗させる共通要因」
VR系スタートアップのナーブに勤める大野さんが、現在までの経験談を語ってくれました。
ご本人さんによるまとめ記事はこちらです!
やはり多いのが、そもそも離職する組織構造になっている場合。
「とりあえず人が足りないから採用しよ」と採用を走らせたところで、
組織に問題がある場合は底の空いた桶に水を注ぐようなもので徒労。
採用するのであれば、
- 候補者をどうアサインするか決まってるか?
- 候補者が入社の時点でやるタスクは変わらないか?
→ 〇〇という技術が得意な候補者を、〇〇を使う△△プロジェクトに充てようと採用したが、入社時には△△プロジェクトが無くなっていた、というケースがあったらしい……
→ 〇〇をやりたいと思って入ってきた人は当然すぐ辞めてしまうし、悪い噂につながる - タスクが誰かに行きやすいような組織構造になっていないか?(タスクマネジメントが出来ているか)
→ 即戦力と言われたメンバーが必死で数々のタスクを巻き取っていたケースがある
→ よほどの超待遇なら別かもだが、ふつうは高負荷でつぶれて病み、会社に来なくなる
などを確認しましょう。という話をしていました。
いずれも当たり前の話ですが、
「どうアサインするか決まってるか?」は、けっこう見過ごしがちなポイントなので要注意です。
「いま人が足りていないんです、忙しいんです、だから少なくともあと○○人はください」という
現場の声をそのまま人事が受け取って採用すると、
(大方そういう場合タスクマネジメントが機能していないので)結局なぞに忙しいままだったり、ヒマになる人が出たり、
あまり良い結果につながりません。
最終的な解決はそのチームやその上長の手でおこなうとしても、
「○人欲しい」の要望に対してそのまま受け取らずに、
「それはどうして?」「どういうタスクをやってもらうの?」などのヒアリングは
人事として大事な仕事と言えるでしょう。
3. Speee りゅっくさん (@_kei_y_)
「元マーケターが採用で失敗した話」
こちらで記事にしてくださっています。ありがとうございます!
マーケターをやっていたので、つい、数字で見ればいい! と思って行動したところ、
広告業界と違ってユーザーまでの距離が近いので、相手の個人の人間としての気持ちの動きを見るのが大切 という結論に落ち着いたという話でした。
(例えばエンジニア採用で、人事からスカウトメールを送るよりも、エンジニアからスカウトメールを送るほうが、相手が心を開いて返信しやすいはず、などの心理的部分に着目するのが大事)
スカウトメールを送った際の遷移率(離脱率の逆。何割の人がメールから面接に至ったか、一次から二次に至ったかなどの値)を求め、
そこから募集人数を採用するために必要なスカウトメールを送信し……とやったところ、
質より量になってしまいスカウトメールが低質なテンプレ化。
返信率は下がってしまった、という苦い思い出を話されていました。
一方で、会場からは
「大企業の新卒採用のような母集団がでかい場合には、マーケティング的な発想が効くかもしれない」という案も出ました。
懇親会では、昔、私がエンジニア組織推進室(現在のものづくり組織推進室……ですよね?)の渡邊さんとお会いしていたので、
渡邉さんがプロダクト推進室に異動になり、りゅっくさんが6月にものづくり組織推進室へ異動になるまでの顛末などおもしろく聞かせていただきました。
渡邉さんとの話で、「エンジニアは極論、ネットですべてが完結してしまって会社で働く必要がない。
それならエンジニアに来てほしい会社はどうすればいいか、ネットとの隔たりを出来るだけなくしていく」という思考の元、
社内で勉強会・ミートアップを人事主導で間髪入れず開催したり、
有名なエンジニアと会社で会えるようにしたりなどの施策を意識した。
という話は、1年前の面談での会話ながら今でも印象に残っています。
4. キュービック 森實(もりざね)さん
「組織拡大後に気付いた採用の失敗」
採用コンサルタントとして活躍されている森實さんです。
ITベンチャーにジョインし 30名から 300 名への組織拡大に携わる一方、それにともなう失敗も経験されたそうです。
4-1. 「〇〇さんと働きたい!」戦略の失敗
入社当時の会社は小さく、知名度が低く、給与が高いわけでもなく、採用で勝てる要素が少なかった。
そこで、「ざねさん(森實さん)と働きたい!」と言われるような状態を作り、
候補者の意欲を上げるために、自分の露出を増やしていったそうです。
その目論見は成功したものの、
会社規模が大きくなっていったときに組織がまとまらない問題が出てきました。
- Philosophy:会社の理念
- Profession:仕事内容・プロダクト
- People:人・社風
- Privilege:給与
組織の束ね方の 4P のうち、「この人と働きたい」という個人を推し出す採用の結果、
Philosophy や Profession の部分、つまり会社自体に魅力を感じて働く人が少なかったことに気付いたのです。
会社はその後、理念の浸透のために会社スローガンの作成をしたり、
でもスローガンは結局浸透しないので、社員にテストしたりと迷走したそうです……。
(当然、テストは「軍隊の洗脳みたい」と社員から大不評だった)
4-2. リファーラル意識の薄まり
もともとは 「採用や広報はみんなでやるもの」 という意識が社内にちゃんとあったのですが、
30名だった会社が100名になる頃にはその意識がすっかり無くなり、
現場は「人事がなんとかしてくれる」と思うようになり、リファーラルの文化が消滅(!)
リファーラルプロジェクトを発足させたものの、
マインドセットを取り戻すのには苦労したそうです。
人事だけががんばっていると、思考レベルでみんなから採用意識が無くなっていくので注意。
これ、カヤック社のぜんいん人事部化計画を思い出しますね。
「ぜんいん人事部化計画」「エイプリル採用」カヤックのユニーク人事を支えるたった1つの問い - ログミーBiz
4-3. 「多様な価値観」問題
「多様な価値観を持った人を採用したい」という要望通りに採用していたら、
たしかに良く言えばいろんな人がいる会社になったのだが、
会社のカルチャーは薄まり、組織の結束力が弱くなってしまったという話。
多様な価値観という言葉は聞こえは良いけれど、
「私達は何をしたい集団なのか」の答えとなるような人材を集めることが本当は大切なこと。
だから、「多様な価値観を持った人を採用したい」に対しては下記のような質問に対する
答えを持ち合わせたほうがよい、というお話をされていました。
4-4. 福利厚生訴求採用の失敗
「福利厚生」が並んでるといい会社に見え応募者が増えるので、
職場に猫とかありとあらゆる福利厚生を求人票に書いていたそうです。
しかし、それで応募してくる人は会社に対して
「ホワイトな会社!」というイメージを強く持ち期待値が上がってしまうため、
(実際はベンチャーで土日出社もあるところだった)
少し何かあったときに「ホワイトじゃないんですね……」と裏切られた気持ちにさせてしまうことが起きたそうです。
あまり応募者の期待値を上げすぎてしまう求人票もそれはそれで良くないようです。
(ところで、「ベンチャーだから深夜残業や土日出社は当たり前」みたいに言う会社をたまに見ますが、やっぱ休むときは休んだほうがいいもの作れるんじゃないかなー、と思います個人的には)
4-5. 総括
「応募者を増やす戦術」を考えてしまうと失敗をしてしまう。
「会社がどうなりたいのか」の 戦略を考える人事 が必要だというまとめをされていました。
うちの会社はどこのポジションになっていくのか、競合はどこなのか、
それらの経営戦略を考えて採用に用いていくのが大事。ということでした。
そのためには当然、経営層が関わってくるわけで、
経営層が人事に積極的でないと、採用は成功に至れない という話につながっていくかと思います。
森實さんの講演は濃かったですね。
5. Repro 畑中さん
「口説いたら引かれた ~超えられない壁~」
ラスト! Repro の畑中さんです。主催などありがとうございます。
登壇資料はこちらです!(GitPitch のシェアURLはディレクトリ指定ができないっぽいので直接Markdownへのリンクです)
創業から2〜3年目、坊主と眼鏡のシニアメンバーばかりだったとき、
業務拡大に伴いコンサルを20名くらい採用する必要が発生しました。
その人数の経験者を採用するのは難しかったのでポテンシャル採用も含めた結果、
今度はその人達をマネジメントするマネージャーが必要となりました。
ここまででちょっと失敗してる気もしますが置いておいて、
今回はそのマネージャー採用に苦労した話です。
なんと驚きの圧倒的辞退率:90%!
これには会場の皆さんから笑いが。
ヒアリングをおこなってみると、大きく理由は5つに大別されるとわかりました。
- ビジネス領域の違い
- 経験したいフェーズの違い
- 年収
- カルチャーアンマッチ
- 家族の理解が得られない
1. 〜 3. はどうにもできないとして、
4. と 5. についてはコントローラブルと考え、改善することにしました。
どうも候補者としては、
- ベンチャー企業は結果が全て→悪かったら即座にひどいことになる
- 土日も当たり前のように働かなくてはいけない
- 妻から同様に「全ての時間が会社に取られる」という認識で、「仕事漬けなのに給料下がるし、ストックオプション本当にもらえるの?」などの嫁ブロック
という誤解があるようで、そこを説明。必要あらば奥さんにも説明。
そうして、採用に至れるよう改善していった、とのことでした。
会場からの質問では「口説き文句は?」というのがあがりました。
「『自分は会社のこういう良いところに惹かれて入社したんですよ』を言うと刺さる可能性が高い」というお答えでした。たしかにそうかも……
6. おわりに
懇親会もとても良かったですね。
採用担当の方が多いからなのか話し上手な方が多く、
非常に楽しい懇親会を過ごすことが出来ました。お食事もいっぱいありましたし。
Schoo の武井さんとお話して、適性分析の分野において
Schoo@me (2017/04設立)が大学との共同研究をしている話の子細を伺ったのは、最高に熱くて燃えましたね。
自分らしさを解析して、誰もが個性を活かせる社会をつくる | SchooMembers
まずベンチャーが R&D (研究開発)の子会社を作るって時点ですでにすごいですからね。
何を出してくれるか期待大です。
そして……
Hacking HR! #3 が 9/25 に開催されます!
ハッシュタグは前回同様 #hackinghrs です。
今回は私としては興味あるテーマではないので参加はしなさそうですが、
今後もぜひとも参加したい、とても良いイベントでした。
人事って最高ですね!