ハトネコエの人事・採用ブログ

人事や組織関連の話で、読んだこと・考えたこと・聞いたこと等々

プライベートチャンネルやDMに頼っているとリーダーは生まれにくい

いろいろな会社を経験しましたが、だいたい、Slack の使い方として
パブリックチャンネルばかりの会社、プライベートチャンネル(もしくはDM)ばかりの会社におおむね二分されます。
パブリック・プライベートが半々という会社は少なく、どちらかに寄っていく傾向にあると感じています。
今日はそこについて考察していきます。

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1. 何も方針を出さないとDM率が上がる

会社として明確な Slack の運用指針を作らない場合、
DMが作られる方にどんどん寄っていきます

これにはいくつかの理由があります。

  • 1-1. メール文化に慣れていたので、やり取りは個人に対してするものという認識でいる
  • 1-2. 「こんなことチャンネルに書いていいのかな?」「みんなが見るところに書いていいの」という恐れ
  • 1-3. その話題をするべきチャンネルが見つからない

1-1. メール文化に慣れていた

そもそも Slack の文化に慣れていないパターンです。
Slack はチャットベースで気楽なやり取りをしつつ、オープンに情報交換をおこなうことで
社内の部署間のコミュニケーションを円滑にする目的や、
他部署でなにがおこなわれているかの情報を拾いやすくすることで部署間の連携を強くし、
連係ミスによる失敗を少なくし、かつ業務のスピードアップを図る目的があります。

ベンチャーを何度も経験している人などは Slack のこの目的を理解しているため、
説明しなくてもたいていの人がパブリックチャンネルでバンバン書いてくれますが、
世の中まだまだそうでない人の方が多いです。

よって、最初はパブリックチャンネルでのやり取りが多かった会社だとしても、
社員が50名を超えてくるあたりで
新しく入ってくるメンバーがそういうのに疎かったりすると、しだいに DM が多くなっていきます。

これを解決するには、

  • 社内の Slack 利用規定を作成する
  • また、規定の中でどういうメリットがあってその規定なのかを述べる
  • 入社メンバーにみっちり定期的に説明する

以上のことが必要になります。

1-2. パブリックに書くことの恐れ

人間は大部分の人が心配性で自意識過剰です。もちろん私も。
メールやLINEの返信が相手から返ってこないと、「なにか私が悪いこと言ってしまったんじゃないのかな…」と不安になりがちです。

そのような恐れを持つ人が多いので、
「この書き込みは誰かを傷つけないか」とか「なにか書いたことが誤解されるんじゃないかな」とか不安を持ちます。
そんなに一人一人のメッセージを気にしてるほど暇な人や、悪意を持った書き込みと捉える心の狭い人は会社に入社させていませんので、
それは杞憂であることが多いのですが、やはり不安に思う人が多いのは事実です。

これを解決するには、

  • まずは書いてもらう(社内の Slack 利用規定に従ってもらう)。そして、パブリックチャンネルで書くことが怖くないとだんだん慣れて気付いてもらう
  • 誰かのコメントが強く注目されないくらいに、チャンネルが常ににぎわっている

これらのことがおこなわれていると良いでしょう。

1-3. 話題をするべきチャンネルが見つからない

これは2通りあります。

1-3a. 単純にチャンネルがない場合

『単純にチャンネルがない場合』は単純で、チャンネルを作ってもらえばいいです。
ただ、ここで規定がしっかりないと、上の 1-1. , 1-2. で説明した理由により
プライベートチャンネルが作られてしまう傾向に陥りやすいので注意です。
あとでもう一度書きますが、プライベートチャンネルはパブリックチャンネルに後から変更できないので、
「ここパブリックチャンネルで良くね?」って気付いてからの変更がしにくいです。

『顧客情報を扱わない限りはパブリックチャンネル』などと、基本はパブリックチャンネルである旨の規定があるといいと思います。

1-3b. チームのチャンネルで書いていいことなのかわからない

『チームのチャンネルで書いていいことなのかわからない』ということもよく起こります。
例えば、「チームメンバー数名での飲み会の写真をチームのチャンネルに上げていいか?」とか、
「○○さん個人あての相談をチームチャンネルに書いていいのか」とか。

チームリーダーからしてみれば、どちらもチームチャンネルに書いてOKです。

いえ、「まだ仕事中のメンバーがいるかもしれない中で、チームのチャンネルに上げるのはいかがなものか。雑談チャンネルに上げるべきだ」という考えのリーダーもいるかもしれませんが、
個人的には、チームチャンネルであれこれ雑に書きやすい空間作りのために、なんでも書いてOKな雰囲気でありたいです。

後者の「○○さん個人あての相談をチームチャンネルに書いていいのか」という考えでチームメンバーにDMされるのはマジで困るやつで、
チームメンバーが知らぬうちにタスクを抱えていた、ってなるので本当にやめてほしいですね……。

というわけで、
「チームの話題やチームメンバーへの相談はチームチャンネルでしてもらって、それで困ることが起きてきたなら新規チャンネルを立ち上げる。DMはおこなわない」
の方針が Slack 利用規定としてあるといいと思います。

2. なぜ DM がダメか

2-1. 通知が飛ぶ

Slack で通知を飛ばしていいのは緊急のときだけです。
とりわけエンジニアは、Slack の通知が飛んで来たら「障害が起きた?!」ということを念頭に置き、あせって Slack を開きます。

ですのでグループDMなんかが作られて話が続くとけっこう地獄で、
イラッとするだけでなく大事な通知を見落としてしまいかねませんから、
グループDMで会話が続くものであれば、プライベートチャンネルにした方がマシです。

実は Slack には「Convert to a private channel...」という機能もあります。

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2-2. あとからメンバーの追加が出来ない

グループDMをしてる途中で「これ、○○さんも知っていた方がいいよね?」ってなったときに
DMの場合は途中からメンバーを追加することができません。

また、グループDMのメンバー数には限界があります。

上で書いた「Convert to a private channel...」の機能を使えば、
会話の内容をチャンネル化してからメンバーの追加がおこなえますので、現在はあまり大きな問題ではなくなりました。
(……が、グループDMを使っているような人は上の機能を知らないので、結果的に「○○さんも知っていた方がいいよね?」の○○さんには伝わらないことの方が多いです)

3. なぜ DM やプライベートチャンネルがダメか

3-1. 情報が拾えない

最初の 1-1. で書いたように Slack の大きな利点は、
オープンに情報交換をおこなうことで社内の部署間のコミュニケーションを円滑にする目的や、
他部署でなにがおこなわれているかの情報を拾いやすくすることで部署間の連携を強くし、
連係ミスによる失敗を少なくし、かつ業務のスピードアップを図る目的にあります。

DMやプライベートチャンネルで情報のやり取りをおこなうのは、
これと正反対のことが起こるデメリットを持っています。

他部署や他プロジェクトでおこなわれていることがわからないし、
部署間で重複することをやって無駄が生じることなどが起こるわけですね。

また、現在働いている人はもちろん、より大きく影響を受けるのは新入社員(特に中途雇用)です。
開かれていない情報は、新入社員のオンボーディングのスピードを大きく下げる効果があります。

優秀な社員であれば、過去の Slack の流れを見ることで、
今走っているプロジェクトの生まれた背景、各部署にどんな人間がいるか、社内の人間関係やパワーバランス、を教えることもなく理解してくれ、
自分がどうプロジェクトを回していけばいいのかをだいたいは理解してくれて、すぐに力を発揮してくれます。

プライベートチャンネルや DM での会話が多いと、これらの情報は拾えず、
誰かが教えてくれるまではわかりません。(それにたいてい、これらを教えてくれる人はいません)

また、本来その新入社員の人が知っておくべき情報のあるプライベートチャンネルに招待されていないことがわかって、
入社1ヵ月してからようやく招待されるなんてことがあります。

3-2. マネジメント層が新たに生まれにくい

チーム内での情報の格差は、新たなマネージャーを生みにくい環境を作ります。

優秀な人材は、情報が充分に与えられればそれ相応の判断ができます。
チームリーダーと同じ分だけ情報が与えられていれば、最大、チームリーダー相応の判断ができます

そういう判断を出来る人を、マネージャーは次のチームリーダーにするべく育てていけばいいわけです。

一方で、情報の非対称性があって、
チームリーダーが知ってる情報をメンバーが知らないのであれば、その情報量の差が大きいほどに、判断は稚拙なものになります。
その稚拙さをもって「こいつは稚拙な判断しかできないな」となってしまうのなら本当に理不尽な話です。

次のマネジメント層を育てるために、情報はできるだけチームリーダー含めたチーム内でフラットにし、
その上で「あなたがリーダーだったらどうするか」をメンバーには 1 on 1 などで問いかけ考えさせる癖をつけさせると良いでしょう。

メンバー全員がリーダー候補になると、チームはとても上手く回ります。
(参考: フォロワーシップとリーダーシップの違いや関係性とは?

3-3. 個人の仕事量が大きくなることがある

1-3b. でも書きましたが、プライベートチャンネルやDMでタスクを依頼されていることは
周りからはわかりません。

DMでのタスクの依頼が常態化すると悲惨で、
Aさんに仕事を依頼するBさん、Aさんに仕事を依頼するCさん、Aさんに仕事を依頼するDさん、が発生したときに、
Aさんは3名それぞれとチャットをすることで時間を取られるし、
そのようなタスクが発生していることを知らないEさんがAさんに仕事を依頼して……とさらにタスクが発生してAさんがパンクします。

チームが形成されていなかったり、チームがあっても 1on1 や KPT などのチーム行事の成熟度が足りていない場合、
こういった問題にはなかなか気付きにくいです。

チームチャンネルでの相談に一元化されていれば、
Aさんがわからない質問やAさんが忙しいときに他のチームメンバーが答えてくれたり、
B/C/D/Eさんからしたら、明らかにAさんに仕事が集中してることはわかるので、
レスが遅くてもイライラしませんし、Aさん以外のチームメンバーに相談した方がいいという可能性にも気付くことでしょう。

正当な人事評価や退職リスク防止のために、個々人の仕事量が見えなくなる状態を作ることは避けましょう

3-4. 「この情報を○○さんに伝えていいですか?」の確認タスクが増える

情報をオープンにするかプライベートにするかの基準が決まっていない場合、
この確認タスクが増えます。

DMやプライベートチャンネルを使うことが当たり前になっている組織ではこの確認タスクが多いです。
しかも、その決定権を持っているのが誰かわからず、最終的にはマネージャーが社長に確認し……までのフローをたどります。
ベンチャーでこの遅さは致命的ですし、なにより、「自分で決めて判断する」というベンチャー企業にとって必要な精神が損なわれ、
「誰かに決めてもらうまで待つ」という精神が社員に蔓延します

3-5. あとからパブリックチャンネルに出来ない

上記の問題を鑑みて、「じゃあパブリックチャンネルにしよう!」と思っても、
Slack の仕様上プライベートチャンネルをパブリックチャンネルにすることはできません

つまりプライベートチャンネル時代のメッセージを残したままパブリックチャンネルにすることができないので、
移行後、過去のメッセージを探すことに苦労するようになってしまいます。
改革には痛みが伴うとは言いますが、なかなかの痛みです。反対の声も多く出るでしょう。

いったんプライベートチャンネルで作ってしまうとこのような苦労が生まれるので、
「とりあえずプライベートチャンネルで作る」でなく、
「とりあえずパブリックチャンネルで作る」 という習慣を早い段階で根付かせておく必要があります。

4. 結局のところ

パブリックチャンネルでのオープンなやり取りが前提となるよう、
Slack 利用規定を従業員(Slack参加者)が2桁になり始めたころまでには作り
業務委託など含む Slack 参加者全員には自社の規定をしっかり案内し、
利用規定が運用されているか管理したり、相談を受けるための人を1人は決めて置き、その相談用のチャンネルも用意しておく。

このようなことが肝要です。

遅くなればなるほどエネルギーが必要な作業になりますので、
創業後は、技術顧問や、ベンチャー慣れしているエンジニアなどに早めに策定してもらうと良いでしょう。

利用規定の参考:

スカウトメッセージがテンプレだと、候補者の心に響かないどころかマイナスなワケ

LAPRASさんのこちらの記事が素晴らしいので、上の記事を読んでもらえればいいのですが、
時おり来るテンプレメッセージを見るたび、私の言葉としても書いておきたいな、と思いましたので書いておきます。

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テンプレメッセージとは

こういうものを言います。

xx xx さん
はじめまして。xxx株式会社採用担当の xx と申します!

プロフィールを拝見し、エンジニアとしての高いスキルをお持ちであることから、  
現在の弊社にふさわしい人材であると考え、お声がけさせていただきました。

私たちは、20xx年xx月に創業し、○○や××などの事業を展開しております。  
<会社説明が続く>

まずは情報交換からでも構いません。
一度ざっくばらんにお話させて頂ければと思います。

ご返信をお待ちしております。

xxx株式会社 採用担当 xx

覚えておいてほしい言葉があります。

スカウトメッセージはラブレターです。

このメッセージはラブレターで言うところの「好きです! 付き合ってください!」にあたります。
シンプルでいいですね。

このメッセージが刺さる場合も、もちろんあると思います。

しかし、とある場合を考えてみてください。

もしも、相手が毎日のようにラブレターをいろんな人からもらうクラスの人気者だったら・・・。

エンジニアは意外とラブレターをもらっている

エンジニアは転職市場ではけっこうな人気者でラブレターを多くもらっています。

その数はすさまじく、頻度が多かったときは Wantedly だけで平日毎日1通もらうくらいでした。
LinkedIn や Green など他媒体も使っている人はもっと多いことでしょう。

もう、そうなってくると全部の会社の人と話したくても話せないレベルになってくるわけで、
どうしても選別しないといけなくなります。

そうなったときに切り捨てられがちなのは、シンプルなラブレターです。

「まあ、この文面なら、他の人にも同じの送ってるんでしょ? 別に本気じゃないんでしょ?」

と思われておしまいなわけです。

あと私の場合は人事系の人間なので、
「今どきスカウトメッセージをカスタマイズするというのは常識なのに、それをしない人事の人って……」って感じで、
会社自体の評価が下がっちゃったりします。……いや、これは特殊な例なので置いておきましょう(笑)

シンプルなラブレターの弊害

このように、成約率を下げてしまうシンプルなラブレターですが、もう1つの大きな損害があります。

送る相手がいなくなるのです。

基本的に、同じ相手にもう1度スカウトメッセージを送るのは心情的におこないにくいし、
社内で作っているアタックリストに「アタック済み」なんて書かれるので、
スカウトを送る相手を Wantedly の広大な海の中から新たに探すことになっていくのですが、
繰り返していくうちに「もう、送る相手がいない……」状態になります。マジでなります。

アタック済みでない優秀なエンジニアを Wantedly から探すというのは、
採用担当の時間と心を大きく消耗させます。

「スカウトメッセージに時間をかけられない」なんて声を聞くことがありますが、
上のようなことを考えると、数打ちゃ当たる戦法よりもスカウトメッセージにこだわるほうが、
結果的に時間の節約になります。

いいスカウトメッセージとは

方針としては、
「あなたのことをいろいろ調べたんだけど、○○とかしてるの最高ですよね! 大好き! あなたが興味ある○○って私も大好きだから、もしかしたら私たちって気が合うかもね? ねえ、もっとあなたのこと知りたいから、お試しで付き合ってみない? もし私と付き合ってくれたら○○してあげちゃうのにな~」
っていう、ヤンデレ的なラブレターです。

ラブレターで考えたらかなりヤンデレでしたが(笑)、方針はこんな感じです。
相手にとっての都合の良さは意識しつつも、「嘘は書かない」というのは徹底しましょう。
(本来空いていない/作っていないポジションに就けるかのように匂わせるなどは当然NG)

例を書いてみます。

xx xx さん、はじめまして! xxx株式会社採用担当の xx です。

Wantedly のプロフィールを読ませていただきました!

Railsエンジニアとしての経験もさることながら、  
ビジネスサイドへの関心が強く、  
Google Apps Script を用いた営業部の業務改善に貢献したという xx 社での経歴は、  
他部署との連携を大切にしている xx さんのお人柄の良さを感じ、
ぜひ一度この方とお話してみたい! と、いてもたってもいられなくなりご連絡差し上げました。

ブログの方も拝見させていただきましたが、
上の業務改善について説明した『Google Apps Script で独自の関数を作成する』の記事は、
エンジニアでない方にもわかるように懇切丁寧に説明しようという気持ちを感じて、
xx さんの他人を思いやる気持ちを強く感じました。

弊社は2018年5月に設立したばかりのまだ若い会社で、
エンジニアも多くなく、まだプロダクトとしても発展途上で人の手によって大きくカバーしている現状です。
xx さんならば、技術の力に加えて他部署との連携力の強さを活かして、
プロダクトをフルスピードで改善してくださるのではないかと感じております。

以下に、弊社CEOの xx が目指しているビジョンについて述べたインタビュー記事がありますので、  
お忙しいとは思いますが、もしよろしければ一度読んでいただければと思います。  
医療についての熱い思いを語っています!  
https://nantoka-kantoka.example.com/interviews/12345

今は転職をご検討されていないかもしれませんが、
ぜひ xx さんと一度お話をしたく思っておりますので、弊社CEOと私でお話をする時間を設けていただけないでしょうか?

ご返信いただけますと、うれしく思います。
よろしくお願いいたします。

例えばこんな感じです。
Wantedly のプロフィールが充実していない人もいますので、
なかなかこう情報をぎっしりと書けることも多くはないと思いますが、情報があったらこのくらい詰め込んでみましょう。

以下、ポイントです。

  • 最初の挨拶は手短かに
  • 相手のプロフィールを徹底的に読んだことをアピール。上の例のように2つ書けると強いです。ブログがあったら、ある程度読んで、自分が言及できそうな記事を探しましょう
  • 自分語りは控えめに。自社の説明が、相手を褒める文章の文章量より少なくなるくらいがオススメです。
    興味を持ってもらえれば多少調べてくれると思うので、そこに期待しましょう。逆に言えば、Wantedlyの会社概要ページもしくはコーポレートサイトの採用ページは、自社の魅力が伝わるよう充実させておきましょう
  • 見てほしい記事URLは1つくらいに絞りましょう。あんまり多く貼ると、相手が記事を見るのにエネルギーを使ったり、めんどくさいと思われたりで、返信アクションまでにたどり着かない可能性があります。
    また、どんな内容の記事かや、どうしてそれがオススメなのかを頭出ししておくと、クリック率が多少上がるかと思います。
  • 『今は転職をご検討されていないかもしれませんが』は書いておくと、面談への心理的ハードルが下がるのでオススメです
  • 面接(カジュアル面談)に誰が出てくる予定なのか書いておきましょう。LAPRASさんの調査にあるように面談の場で CEO や CTO に会いたい方が多いので、あらかじめそれらの人に会えることを伝えておくと、返信率も上がると思います。
    なお、面談に出る人がスカウトメッセージを書くのが一番いいですし、面談の場でスカウトメッセージの内容について改めて振り返っておくと、候補者様からの印象は良くなると思います。少なくともどちらか片方はおこないましょう。

文章例を書きましたが、逆にみんながこれとおんなじような文章を書くと目に留まりづらくなるとも言えるので、
もし社内に協力してくれるエンジニアがいる場合は、
現在の傾向の調査のために、もらっている実際のスカウトを見せてもらって、
それを元に、基本を守りつつも、目につくスカウトメッセージは何か、という逆張りの精神も持っておくとよりグッドです!
(もっと言えばエンジニアにスカウト対象を探してもらって、スカウトメッセージを、書き方指導しつつ書いてもらえるとベスト)

すでにシンプルなラブレターをやってしまっている場合

上で、送る相手がいなくなると書いたシンプルなラブレターことテンプレメッセージですが、
まだ挽回のチャンスはあります!

2度メッセージを送ることがシステム上 出来ないわけではないので、
「前回のメッセージで伝わらなかったかもしれないけど、でも私、本気だから!」
という趣旨のメッセージを送ることで挽回を図りましょう。

xx xx さま

再度のご連絡になり、申し訳ありません。
前回のメッセージでは言葉が足りてないと思い、ご迷惑を承知で再度のご連絡を差し上げました。

xx さんはRailsエンジニアとしての経験もさることながら、  
ビジネスサイドへの関心が強く、  
Google Apps Script を用いた営業部の業務改善に貢献したという xx 社での経歴は、  
他部署との連携を大切にしている xx さんのお人柄の良さを感じ、
私どもとしましてはぜひ xx さんとお仕事をご一緒したいと思いました。

また、xx さんの書かれています『Google Apps Script で独自の関数を作成する』の記事は、
<以下略>

再度の連絡への謝りを入れたあとに、相手のどこがいいと思ったのかを書き始める、という手法です。
ただし、謝りから入ってしまっているぶん、文章としてはどうしても堅くならざるを得ないという欠点があります。

また、受け取る方としても、2度連絡をもらうのは、相手の本気度を多少感じる一方、
返答を催促されているように思えて多少イヤな気持ち(返信しにくい気持ち)になってしまいます。

そのようなデメリットがある一方、
テンプレメッセージを送ってから返答が来なくなってる状態よりかはマイナスにならないと思いますので、
やらないよりかは多少マシだと思います。

返答を催促してる文章に思われないようには充分に配慮しましょう。

結論:スカウトメッセージはファーストアプローチなので超大事

上の挽回の方法で触れました通り、
2通目となると気を遣うところも多く苦戦します。

スカウトメッセージは候補者様と会社との最初の接点になりえます。
そこで、相手にどれだけの好意を持ってもらえるかは大事なポイントです。

相手に関心を持ってもらえるスカウトメッセージが何かを考え、
「このスカウトメッセージで会社のファンを増やすぞ!」くらいの気持ちで取り組めると、
良い結果が付いてくるのではないかと思います。

会社のファンづくりの第一歩、がんばりましょう!


・・・丁寧なスカウトメッセージを書いてくださっているのに返信できていない企業様、申し訳ありません・・・かけてくださった時間に報いたく、できるだけ返信はおこないたく思っております。とても遅いレスポンスになるかもしれませんが、なるべくお返しできるよう、がんばります。

カジュアル面談で大事なことって?(『公開! みんなのカジュアル面談 #1』レポート)

『公開! みんなのカジュアル面談 #1』を開催しました!

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公開! みんなのカジュアル面談 #1

『プログラマのための数学LT会』以来の主催イベントとして、
『公開! みんなのカジュアル面談』を 10/21 に開催しました。今回はそのレポートです!

写真は まさよふさん (@masayofff) からご提供いただきました。
ありがとうございます。

なぜ開いたか?

Wantedlyスカウトなどをきっかけとしたカジュアル面談の機会は増えました。

面談の舞台には人事だけでなく現場のエンジニアが参加することが増え、
それ自体はいいことなのですが、エンジニアは面接慣れしていないことが多く、
また、人事ですら、カジュアル面談をどういった面談にすればいいのか、わからないでいることは多いです。

結果として、カジュアル面談の失敗が起こります。

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開会式の資料より『カジュアル面談の失敗って?』

  • 会社への興味を惹けなかったり、ありきたりな事業内容に思われて「つまらない会社」と思われてしまう
  • 相手に悪い心象を与えてしまう(例えば面接官がずっとPCを見ている、話を遮るなど)
  • 候補者への訴求が足りなく、「別に入社するのが私でなくてもいいのでは?」と思われてしまう

カジュアル面談にいらしてくださった方は、多少なりとも会社に興味を持ってくださった方です。
交通費をかけてまで来てくださっているパターンが大半です。
せっかくの大チャンス、そこから次につなげられないのは面談の失敗です。

では、どうすれば良いカジュアル面談はできるのでしょう?

自分がいいカジュアル面談が出来たか(自社へのアトラクトが作れたか)を自社の人に客観的に判断してもらうのはとても難しいです。
カジュアル面談のやり方は確立されておらず、誰かに聞いても明確な答えが得られるものでもありません。
そこで、「カジュアル面談を見せあうことで良いところを吸収し高め合おう!」と考え、今回のイベントを開催しました。

40分の模擬面接と20分のフィードバックタイムを通して、
面接官役の方、客席の方ともにスキルアップができることを目指します。

面談の様子

第1部:二井 雄大さん(LAPRAS株式会社)

予定していた小谷さんが風邪で来られなくなり、急遽、
会場をお借りしている LAPRAS二井さんに、面接官役をやっていただくことになりました。
当日にも関わらずご協力くださり、本当に助かりました! ありがとうございます。

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二井 雄大さん(LAPRAS株式会社)

候補者役は横江さんにおこなっていただき、
『日本最大の "人" のデータベースを作りたいWebエンジニア Wanted!』 に「話を聞きに行きたい」で応募したというシチュエーションでお願いしました。

候補者が気になっていたLAPRASのプロダクトの詳細、
(候補者視点では機械学習の会社の印象だったが)Webエンジニアが活躍できる場はどの程度あるのか、
今後どういった機能を拡充させたいのか、などの話を中心に進みました。

会社紹介資料が充分に用意されていて説明がわかりやすかったことに加え、
今後の選考フローが詳しく案内され、候補者が次に何をすればいいのか想像がつきやすくなっていたのもポイントかな、と思います。

選考フローの説明は人事にとっては自然なことかもしれませんが、
私含めたエンジニア面接官にとっては全然頭に入っていなくやり逃していたことで、
懇親会ではエンジニア面接官同士で、「次何すればいいかの説明って大事だね……」と反省しあっていました。

さすがのわかりやすさで評判のよかった二井さんの面談ですが、
二井さんいわく、本来は

  1. 組織・事業の話
  2. プロダクトの話
  3. 候補者についての話
  4. クロージング

という四本柱で話すところを、
プロダクトの話で時間を使ってしまって組織・事業の話をほとんどすることが出来なかった。
プロダクトの説明までするのは及第点でしかなくて、
候補者がそこで満足してしまい次のステップにつながらない、今回のは30点! と悔しがっていたのが印象的でした。

LAPRAS式カジュアル面談の記事で概念を読むことはありましたが、
実践として見られることは今までなく、LAPRASさんの登壇の中でもかなり異色で、心に残りました。
見ていて、カジュアル面談について戦略立てて進めようとしている意志が伝わりましたね。

第2部:是澤 太志さん(合同会社クロスガレージ)

是澤さんの面談を受けたことのある私としては、
「この面談スタイルを多くの方に見てもらいたい!」と思っていて、
イベント開催を決めてから真っ先にお願いに上がりました。

特殊なイベントなので受けてくださるか不安でしたが、すぐに快諾くださり、本当に嬉しかったです。

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是澤 太志さん(合同会社クロスガレージ)

候補者役は荒さんにおこなっていただき、
現在はアプリエンジニアなのでバックエンド未経験ながらも、Speeeのバックエンドエンジニアはどうかと友人エンジニアから紹介を受け面談。というシチュエーションでやってくださいました。*1

候補者と会社の接点を増やす、というのを主目的に置いており、
Speee時代はまず人事と候補者で10分ほどお話をして、そこで人事と候補者の接点を作り、
その後で人事から候補者の緊張状態など伺った上で交代し、是澤さんが面談に出てくる、という流れにしていたそうです。

面談が始まると、是澤さんの自己紹介ののち、(この自己紹介が少し長めで、「いろいろ経験していますので、キャリアなど面接に直接関わらないことも聞いてください」と質問しやすい空間作りをしている)
会社紹介に移ります。ここで席を立ち、ホワイトボードの前に移動します。

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ホワイトボードを使って会社説明をする是澤さん

面談用のスライド資料を準備することも一般的になってきた昨今ですが、
是澤さんとしては「よく出来た資料は隙がない」という考えのもと、
ディスカッションが起こりやすいよう、あえてホワイトボードなど手書きでの説明をおこなうよう心がけているそうです。
ここでも、相手が発言しやすい環境づくりに気を遣っていることが伺えます。

会社が安定していて、経営陣がエンジニアを尊重する気持ちがあるために
技術的なチャレンジがおこないやすい、などの会社のアピールポイントを含めた説明の後は、
「(複数ある事業の)どれに興味ありますか?」という質問。
これにより、「じゃあ次はこの部署の人と試しに話してみますか」などと次につなげる目的があるそうです。

会社の説明をしたあとは候補者の話。
「将来、どうなりたいとかあります? 3年後とか……20年後とかでもいいですけど、欲望的なものとか」からスタートし、
候補者の人が何をしていきたいのか、大事にしているのか、深掘っていきます。

この時間は完全に面接というよりもキャリア相談の 1on1 といった様子で、
是澤さん自身、この時間は会社のことを忘れて相手とのディスカッションを楽しむことに重きを置いているようです。
これはカジュアル面談としてかなり異色で、実際に見てもらいたいです。

sli.do での質問の中で「相手が若手だから成長のためにやっている?」とありましたが、
会社として「これから伸びていく人」を採用するために、こういった深いディスカッションをいつも面談ではおこなっているそうです。

最後に「あとでFacebookの申請くだされば、今日聞き逃したことでもキャリアのことでもなんでも、気軽にメッセージください」と
ゆるいつながりを作れるようにクロージングし終わりました。

候補者と会社の接点を増やすことが目的で、目先の採用人数を増やすことが目的ではない、(結果的には採用に結びつくのですが)
という是澤さんの面談に対する哲学が伝わってくる独特なカジュアル面談でした。

公開カジュアル面談を通して

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スポンサーのリブセンスさんからご提供のドリンク

おもしろかったのが、2人とも時間を見ていなかったのに、40分の模擬面談中、
20分で会社の話を終わらせて、残りの20分で相手の話を聞くことにシフトしていたこと。
面談慣れしすぎていて、時間配分が体に染み込んでいるのかもしれません。

面談の方向性はけっこう違っていて、
二井さんが理路整然と論理的、是澤さんが相手に寄り添って感情に働きかけるもの、に感じました。

「もっと話してみたい」と思わせる点においては、是澤さんの、面接に直接関係ない相手の話をどんどん引き出す、という手法は良さそうで、
「相手を採用することがゴールではない」と割り切っているからこそ取れる作戦に思えます。
もちろん、会社と候補者の接点を増やすという目的は成すために、次へつなげる流れを作らなければ、
ただ1対1のお話を楽しんだだけで会社を意識してもらえなくなるので、その点は注意です。

個人的なまとめとしては、

  • 会社の良いところをアピールできる資料の準備(是澤さんみたいに資料無しで話せる人は多くないと思うので、これはあった方がいいと思った)
  • 半分は会社の話をして、半分は候補者の話をするという時間配分
  • 相手の今後やりたいことを伺う
  • 面談の最後では、候補者が次に何をすればいいのか案内する

あたりを真似したいなと思いました。

最後に

色々ありましたが、開催でき、本当によかったです。
当日の出席票を数えたら21名の方にご参加いただいていたようで、想定していたより多く驚きました。嬉しいです。

懇親会の場では「この1年の中で一番勉強になるイベントだった」などありがたい言葉をいただき、
また、Twitter でもご感想をいただけて幸せな気持ちになりました。

面接官役を快く引き受けてくださった二井さん、是澤さん、小谷さんはもちろんのこと、
会場を貸してくださった LAPRAS の千田さん、伊藤さん。
いろいろ気にかけてくださった ミラティブ の井上さん、
候補者役をおこなってくださった荒さん。

ドリンクスポンサーの リブセンス さん。(転職ドラフトビールおいしかったです!)
当日の写真撮影を引き受けてくださった まさよふ さん。

多くの方にお世話になりました。
ひとり主催かつ特殊な形式の勉強会だったため、皆様のご協力があって初めて成り立ったイベントでした。

sli.do にもたくさんの投稿がありました。
2時間のイベントで101件の投稿があり、
20分のフィードバック時間を有効に活用することが出来ました。
参加者の皆様、ありがとうございました。

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ほとんどの方が sli.do を覗いてくださいました

かなりエネルギーを使ったイベントでしたので次回がいつになるか確信が持てませんが、
もっとも早ければ、12月イベント公開の2月開催になるかと思います。
その際は改めて、皆様のご参加、よろしくお願いいたします。

*1:主催としては、クロスガレージの募集がないのでシチュエーションをどうしようか迷いましたが、最終的には是澤さんがSpeeeに確認取ってくださり、イメージがつきやすいシチュエーションの面談となりました。ありがとうございます