【採用、そして評価制度】scouty x HRBrain の勉強会に参加してきました!
きたぞ!!! #scouty_hrbrain pic.twitter.com/Cm8UN6sMld
— ハトネコエ (@nekonenene) 2019年3月15日
というわけで、scouty さん*1と HRBrain さん共催の、こちらのイベントに参加してきました!
【scouty × HRBrain】HRTechベンチャーが語る自社採用、目標・評価管理の成功と失敗
今最高にイケてる(ハトネコエ視点) HR Tech 企業2社のゴールデンタッグです。最高ですね。
会場はいっぱいになるかなと思いましたが意外と参加者は少なかったです。15人くらいかな。
しかし、 sli.do で質問を受け付けていたら、
かなり多くの質問が集まって、すべての質問に答えきれないくらい盛り上がっていました!
sli.do で質問を受け付ける勉強会、他にも何個か参加したことありますが、
そんなに質問って集まらないんですよね。
質問が集まりすぎて、予定していたタイムテーブルと大きく変わって
19:50〜21:10 までずっと質疑応答の時間みたいになっていました(笑) 楽しかったです。
1. 登壇者紹介
モデレーターは HRBrain の大森さんが担当してくださいました。イケメンですね。
話の流れを意識しつつ、うまく質問をどんどん拾っていってくださいました。
うお、めっちゃぶれてる。ごめんなさい。
スピーカーは左から scouty の千田(ちだ)さん、 HRBrain の中野さんでした。
2. リファーラル採用の話
2-1. 「全員が採用担当」の意識作り
まずは採用の話。
scouty さんは 40% がリファーラル、40% が自社サービスである scouty を使用しての採用とのこと。
scouty さん自身も scouty を活用しているんですね(笑)
scouty さんも HRBrain さんも共通して意識しているのは、
人事が頑張って採用するというよりは、 全員が採用しようというマインド とのこと。
これは以前書いた採用失敗談の記事の『4-2. リファーラル意識の薄まり』の逆ですね。
では、そのために何をしているかと言うと、
scouty さんの場合は、良い会社にするのがまず一つ目に取り組むべきところである、とのこと。
「良い会社」の定義は glassdoor の評価軸が参考になるとのこと。
- 友人に勧めたくなる
- 経営者が信頼できる
- 事業の将来性に期待できる
の3軸ですね。
もう少し詳しいところは、千田さんの書いたリファーラル採用に関する記事の
『メンバーロイヤリティ(動機づけ軸)』のところをお読みください。
「友情」が崩れないことを大切にするため、
リファーラルでの候補者の選考には紹介者を一切関与させないことを明言する、などと心揺さぶられることが書かれています。
「全員が採用担当」のマインド形成として、他には「全員でやるぞ」って上の人(経営者)がみんなに言う、っていうのもありました。
すごく素朴なやり方のようで、私はこういうのは大切だと思っていて、経営者はみんなにどうしてほしいかを常に発信できると良いと思っています。
それによって、何が期待されているかを社員は知ることができるし、経営者のなってほしくないネガティブな企業文化になってしまうことを避ける効果もあると思います。大事です。
scouty さんは月の売上が一定数を超えると全員の給与が上がるという制度を設けており、
採用がその人の給与を上げることにつながる(紹介した人が採用されることによって事業が伸び、結果としてみんなの給与が上がる)ということが伝わるといい。というモチベーション作りもおこなっているようです。
中野さん「リファーラル報酬というのが最近は一般的になったので
とりあえずで導入してしまう企業も多いけれど、
まず、どう嬉しくなるかなどが社員に伝わるよう、動機付けの設計をするのが大事」
ちなみに scouty さんはリファーラル報酬を設定していないそう。意外!
「友人がいい会社(scouty)に入って幸せになってもらいたい」というモチベーションで行動してもらえるようにしているとのこと。
2-2. リファーラル採用に関する質問
Q. エンジニアって、どういうモチベーションで誰かを採用するんだろう?
私の書いた質問です。
「どういうモチベーションでリファーラルするんだろう?」って文章が正しかったですね……。
大森さん「エンジニアは常に人手が足りていないので、良いエンジニアを入れることでもっとプロダクトを成長させたい! というモチベーションを持っていると思います」
Q. リファラルとか全員で採用活動ってなったら、そもそも「人事部」の存在って本当に必要なのか?
肝心の登壇者の回答を覚えていないんですが、この質問おもしろいなあ、と思って取り上げました。
私としては、そもそも人事の活動は採用だけでないってところがあるし、
「採用」に絞ってみても、中長期的な採用計画を全員が考えられるかと言うとそこは専門がいた方がいいし、
採用者の受け入れをどうするか、とか、リファーラル文化の浸透とか、採用イベントの企画とか、Wantedlyなど媒体の運用とか、
やれることは多いので、ある程度の規模の会社ならやはり人事は必要かな、と思います。
Q. リファラルとその他採用で、パフォーマンスや定着の違いはありますか?
これもおもしろい質問ですね。
リファーラル採用での候補者は「事業ビジョン」でなく「人」で会社を選んでしまっているので、定着が悪いのではないか? とか、
リファーラルだと選考基準が甘くなってしまうのではないか? という懸念からの質問だと思います。
千田さん「リファーラル採用での候補者も、選考のプロセス自体は変えていなく同じ基準なので、パフォーマンスや定着については変わらない感触です」
3. 評価制度の話
3-1. 1on1 のあり方
HRBrain さんでは、自社サービスの HRBrain を用いて、 1on1 管理をおこなっているそう。
1on1 の際に、1on1 をする両者がメモを取る仕組みになっていて、そのメモはお互いが見られる。
これによって、話したことの受け取り方の違いが発生している場合に気付ける効果がある。
会場からの質問では、「1on1 で話した内容が記録として残るのは、1on1 の心理的安全性が下がりません?」というものが出たが、
いちおうこのメモは、1on1 の両者間と、あとは役員陣のみしか見られないものになっているそう。
個人的には、社内で共有されると思うと
けっこう 1on1 で話すことを自分の中で制限しちゃうかもなぁとは思いました。
「メモに残してもらいたくない内容は『ここはオフレコで』と言う」とか明文化されてると少しやりやすいかもしれません。
メモを残すこと自体は良いと思うので、気持ちよくおこなえるための合意形成が大事になってきますね。
1on1 は頻度を多くやって、被評価者に短いタームでフィードバックを返せることが大事で、
仮に成績が悪いとしたら、「これ出来ていないよね」を早めに伝えることで、
期末時の査定が被評価者から見て「なぜか低い!」という驚き(ネガティブサプライズ)を起こさない効果がある。という話がありました。
1on1 についてはちょうど先月記事を書いていますので、そちらも見てもらえると嬉しいです!
3-2. マネージャーのあり方
中野さん「自分が頑張るより、自分と同じくらい出来る人を2人作れたほうがよっぽど素晴らしいよね? ってのを昔から考えています」
育成に先行投資をしよう、という話がありました。
1on1 はそのための1つの活動ですね。
しかし育成で難しいのは定性的評価、つまり、何が出来る状態なら育成完了したと言えるかの部分。
HRBrain の中野さんは、育成の完了状態を「自走できる状態」とし、
「上司に確認せずとも、上司がやってほしいと思っていることを勝手に自分でやれる状態」と定義しています。
たしかにこの「自分で判断できる状態」になるまでってけっこう時間かかりますけど、
それが出来ると一気に業務がスピードアップしますよね。育成大事ですね。
HRBrain のおもしろい点として、目標を共有する設定にも出来るそう。
成果を出す人というのは得てして、やるべきことが明確化されているため目標設定が上手い。
というのが中野さんの話で、目標設定を共有することで、
上手い目標設定を見ることができたり、マネージャーに将来的になりたい人がマネージャーがどういう視点で考えているのか見られたり、
学びの効果を得られると話していました。
なるほど、現在うちのチームで目標設定を共有しているのは
「他の人がどういう目標を立てているのか知って、全員が目標達成をできるよう支え合ってほしい」という願いでしたが、
そういう効果も望めるというのは考えていないところでした。良さそうです!
全社的に目標設定を共有したくなりました。
3-3. 10段階評価
HRBrain さんでは事業目標の達成度と、会社のバリューの体現の2軸を 5:5 の配分で評価しているそう。
昔は5段階での評価でしたが、5段階だと被評価者が4点をつけたときに評価者が3点とは付けにくい気持ちになる(20%違うので)問題があったため、
ざっくり5つに分けた評価基準をさらに2分割した10段階評価にすることで、点数を付けやすくしたそう。
このスライドには載っていませんが、
「チームにポジティブな影響を与えるほど体現している」や「体現している」の具体例がそれぞれ数個示されていると、
点数付けはよりおこないやすそうですね。
点数付けは被評価者も評価者も頭を悩ませるポイントですので、
基準は詳しければ詳しいほど良さそうです。
4. ふりかえって
聞いたことのなかった考え方もありましたし、質問がたくさん飛んでとてもいい会でした。
質問がありすぎて、スライドが用意されていたのですが、ほとんど使われませんでした(笑)
途中途中で参考資料として使われたこのスライド、
おもしろい情報も載っているので「公開してほしいな〜」と聞いてみたら、
後日メールで案内されるそうです。わーい!
届いたらここにも貼り付けようと思います。
さて、connpass での応募時にも書いた、とても気になっていた疑問がありました。
Q. 人事自体の目標管理ってどうすればいいですか?(採用人数をKPIにしてしまいがちだけれど……)
これに対しての中野さんの回答は、
「人事は組織のパフォーマンスアップのために人を適材適所にあてるのが一つの仕事。
だから例えば、適材適所にあてるための施策を作る、というのは一つの目標設定になりうるのでは」という話でした。
なるほど、と思いつつも、じゃあその施策の良し悪しはどう判断するのか? とか、施策を作るだけ(アウトプットが見えるものだけ)が人事の仕事なのか? とか、
定性的で納得感ある評価をおこなう観点では、まだまだ考えられるところはありそうです。
千田さんがめちゃくちゃ回答に窮していましたけど、実際これは、そうとう難しい問題なんだなあと思います。
もしかすると、総務や人事といった、業務範囲が多岐に及ぶ業種の評価に
目標設定(MBOやOKR)を使うというのがふさわしくない可能性もあります。
必要な業務スキルを書き出しておいて、評価時はそれらのマスター度をスコアにする成長評価とか、
360度評価を使うとか、そういう考えも全然あると思います。
『制度をリリースしたあと、社員からどんなポジティブ・ネガティブな声が出て、それをどう軌道修正をしていくかの方が大切』と、
『デキる人事はどう動くのか? 人事のプロが語る、強い組織のつくり方』の記事でも触れられていますし、
評価制度に正解がないことは常に意識しつつ、
現場にとって今なにが最良か考えながら、評価制度をプロダクトのごとく常にアップデートさせていきたいですね!!
*1:2019年春より、社名およびサービス名が「scouty」から「LAPRAS」に変わります https://thebridge.jp/2019/03/scouty-is-gonna-be-a-lapras
Hacking HR! #2 に参加して採用業務の失敗を聞いてきたよ
会社にとって 一番大事なもの ってなんでしょう?
間違いなく 採用 です!
ろくでもない人を雇うと、周りと衝突を起こしたりマネジメントコストが増えたり、
疲れて周りの人が辞めていったり……とまあ、ろくなことになりません。
そんなろくでもない人を部長職にでもしちゃおうものなら、
部単位でどんどん人が辞めていくし、ろくでもない部長がろくでもない人を入社させてしまうのでまあ簡単に会社が腐っていきます。
一人辞めると一人採用する必要があるわけで、それにかかるコストは
エージェントに支払う金額だけで 200 〜 300 万円ほど。(それ以外に掲載費用などもかかるわけですが)
会社の人材の質が下がるだけでなく実質的な費用もかかるので、
採用は本当に気をつけないと、すぐに大変なことになっていきます。
(そういえば昨年こんな記事を書きました)
0. Hacking HR! #2 に参加したよ
さて、前置きが長くなりましたが、
そんな採用に関するおもしろそうな勉強会を発見し、参加してきました。
Hacking HR! #2 です。
スタートアップ企業の人事の勉強会で、特に採用に関してのテーマでやっているようです。
今回のテーマは『実録!「採用」業務の失敗談』
いいですね、このテーマだけであと5回くらいはできるんじゃないかって気がします。
会場は Repro さんです。
トイレにミューズ泡ハンドソープが置かれていて、
「わかるわ〜、ビル備え付けのハンドソープって全然泡立たないよね、置くよね」って思いました。
(私の勤めてる会社にも置いてある)
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1. scouty 伊藤さん (@tetsuyaito_2)
「合否判断が分かれて気付いた! 採用要件の明確化がもたらした2つの価値」
トップバッターは最近サービスが正式リリースを果たしました scouty さん。
(今までのってオープンβ版だったんですね)
scouty さんは 3〜4ヶ月前にお話を聞きに行ったばかりで、おもしろい人事制度をしているな〜と感じている企業さんです。
まさにこのイベントタイトルの「Hacking HR!」って会社ですね。
そんな scouty さんで起こったのが、営業を雇うにあたって
メンバー間で判断が分かれたこと。
じゃあどうしたかと言うと、採用基準をもっと明確化しました。
超詳細な採用基準 です。
「なになにをこうやったことある」「こういう環境でこれをやったことある」といったファクトベースに基づいた、
解釈が人によって分かれないような採用基準を、
細かく細かく超詳細に落とし込んだそうです。(その項目リスト見てみたいですね!)
その結果として、採用すべきかの判断にかかる時間を少なくすることができたばかりでなく、
リファーラル(知人採用)がおこなわれやすくなりました。
どういうことかと言うと、採用要件が非常に明確になっているぶん、
「じゃあこういう人が合うんだ」と社員も理解しやすいので、人を連れてきやすくなるということです。
結果、月におこなわれた50件の面談のうち、採用担当由来の面談は13件、
つまり 70% 近い 37 件がリファーラルを元とする面談となったそうです。マジで?! すごい。
なお、scouty さんは採用候補者と社員全員がご飯を囲むのですが、
その際、全社員が書くその人に関する判断のチェックシートも非常に細かく項目があるそうですよ。
2. ナーブ 大野さん
「5回転職し6社で採用に関わって感じた、採用を失敗させる共通要因」
VR系スタートアップのナーブに勤める大野さんが、現在までの経験談を語ってくれました。
ご本人さんによるまとめ記事はこちらです!
やはり多いのが、そもそも離職する組織構造になっている場合。
「とりあえず人が足りないから採用しよ」と採用を走らせたところで、
組織に問題がある場合は底の空いた桶に水を注ぐようなもので徒労。
採用するのであれば、
- 候補者をどうアサインするか決まってるか?
- 候補者が入社の時点でやるタスクは変わらないか?
→ 〇〇という技術が得意な候補者を、〇〇を使う△△プロジェクトに充てようと採用したが、入社時には△△プロジェクトが無くなっていた、というケースがあったらしい……
→ 〇〇をやりたいと思って入ってきた人は当然すぐ辞めてしまうし、悪い噂につながる - タスクが誰かに行きやすいような組織構造になっていないか?(タスクマネジメントが出来ているか)
→ 即戦力と言われたメンバーが必死で数々のタスクを巻き取っていたケースがある
→ よほどの超待遇なら別かもだが、ふつうは高負荷でつぶれて病み、会社に来なくなる
などを確認しましょう。という話をしていました。
いずれも当たり前の話ですが、
「どうアサインするか決まってるか?」は、けっこう見過ごしがちなポイントなので要注意です。
「いま人が足りていないんです、忙しいんです、だから少なくともあと○○人はください」という
現場の声をそのまま人事が受け取って採用すると、
(大方そういう場合タスクマネジメントが機能していないので)結局なぞに忙しいままだったり、ヒマになる人が出たり、
あまり良い結果につながりません。
最終的な解決はそのチームやその上長の手でおこなうとしても、
「○人欲しい」の要望に対してそのまま受け取らずに、
「それはどうして?」「どういうタスクをやってもらうの?」などのヒアリングは
人事として大事な仕事と言えるでしょう。
3. Speee りゅっくさん (@_kei_y_)
「元マーケターが採用で失敗した話」
こちらで記事にしてくださっています。ありがとうございます!
マーケターをやっていたので、つい、数字で見ればいい! と思って行動したところ、
広告業界と違ってユーザーまでの距離が近いので、相手の個人の人間としての気持ちの動きを見るのが大切 という結論に落ち着いたという話でした。
(例えばエンジニア採用で、人事からスカウトメールを送るよりも、エンジニアからスカウトメールを送るほうが、相手が心を開いて返信しやすいはず、などの心理的部分に着目するのが大事)
スカウトメールを送った際の遷移率(離脱率の逆。何割の人がメールから面接に至ったか、一次から二次に至ったかなどの値)を求め、
そこから募集人数を採用するために必要なスカウトメールを送信し……とやったところ、
質より量になってしまいスカウトメールが低質なテンプレ化。
返信率は下がってしまった、という苦い思い出を話されていました。
一方で、会場からは
「大企業の新卒採用のような母集団がでかい場合には、マーケティング的な発想が効くかもしれない」という案も出ました。
懇親会では、昔、私がエンジニア組織推進室(現在のものづくり組織推進室……ですよね?)の渡邊さんとお会いしていたので、
渡邉さんがプロダクト推進室に異動になり、りゅっくさんが6月にものづくり組織推進室へ異動になるまでの顛末などおもしろく聞かせていただきました。
渡邉さんとの話で、「エンジニアは極論、ネットですべてが完結してしまって会社で働く必要がない。
それならエンジニアに来てほしい会社はどうすればいいか、ネットとの隔たりを出来るだけなくしていく」という思考の元、
社内で勉強会・ミートアップを人事主導で間髪入れず開催したり、
有名なエンジニアと会社で会えるようにしたりなどの施策を意識した。
という話は、1年前の面談での会話ながら今でも印象に残っています。
4. キュービック 森實(もりざね)さん
「組織拡大後に気付いた採用の失敗」
採用コンサルタントとして活躍されている森實さんです。
ITベンチャーにジョインし 30名から 300 名への組織拡大に携わる一方、それにともなう失敗も経験されたそうです。
4-1. 「〇〇さんと働きたい!」戦略の失敗
入社当時の会社は小さく、知名度が低く、給与が高いわけでもなく、採用で勝てる要素が少なかった。
そこで、「ざねさん(森實さん)と働きたい!」と言われるような状態を作り、
候補者の意欲を上げるために、自分の露出を増やしていったそうです。
その目論見は成功したものの、
会社規模が大きくなっていったときに組織がまとまらない問題が出てきました。
- Philosophy:会社の理念
- Profession:仕事内容・プロダクト
- People:人・社風
- Privilege:給与
組織の束ね方の 4P のうち、「この人と働きたい」という個人を推し出す採用の結果、
Philosophy や Profession の部分、つまり会社自体に魅力を感じて働く人が少なかったことに気付いたのです。
会社はその後、理念の浸透のために会社スローガンの作成をしたり、
でもスローガンは結局浸透しないので、社員にテストしたりと迷走したそうです……。
(当然、テストは「軍隊の洗脳みたい」と社員から大不評だった)
4-2. リファーラル意識の薄まり
もともとは 「採用や広報はみんなでやるもの」 という意識が社内にちゃんとあったのですが、
30名だった会社が100名になる頃にはその意識がすっかり無くなり、
現場は「人事がなんとかしてくれる」と思うようになり、リファーラルの文化が消滅(!)
リファーラルプロジェクトを発足させたものの、
マインドセットを取り戻すのには苦労したそうです。
人事だけががんばっていると、思考レベルでみんなから採用意識が無くなっていくので注意。
これ、カヤック社のぜんいん人事部化計画を思い出しますね。
「ぜんいん人事部化計画」「エイプリル採用」カヤックのユニーク人事を支えるたった1つの問い - ログミーBiz
4-3. 「多様な価値観」問題
「多様な価値観を持った人を採用したい」という要望通りに採用していたら、
たしかに良く言えばいろんな人がいる会社になったのだが、
会社のカルチャーは薄まり、組織の結束力が弱くなってしまったという話。
多様な価値観という言葉は聞こえは良いけれど、
「私達は何をしたい集団なのか」の答えとなるような人材を集めることが本当は大切なこと。
だから、「多様な価値観を持った人を採用したい」に対しては下記のような質問に対する
答えを持ち合わせたほうがよい、というお話をされていました。
4-4. 福利厚生訴求採用の失敗
「福利厚生」が並んでるといい会社に見え応募者が増えるので、
職場に猫とかありとあらゆる福利厚生を求人票に書いていたそうです。
しかし、それで応募してくる人は会社に対して
「ホワイトな会社!」というイメージを強く持ち期待値が上がってしまうため、
(実際はベンチャーで土日出社もあるところだった)
少し何かあったときに「ホワイトじゃないんですね……」と裏切られた気持ちにさせてしまうことが起きたそうです。
あまり応募者の期待値を上げすぎてしまう求人票もそれはそれで良くないようです。
(ところで、「ベンチャーだから深夜残業や土日出社は当たり前」みたいに言う会社をたまに見ますが、やっぱ休むときは休んだほうがいいもの作れるんじゃないかなー、と思います個人的には)
4-5. 総括
「応募者を増やす戦術」を考えてしまうと失敗をしてしまう。
「会社がどうなりたいのか」の 戦略を考える人事 が必要だというまとめをされていました。
うちの会社はどこのポジションになっていくのか、競合はどこなのか、
それらの経営戦略を考えて採用に用いていくのが大事。ということでした。
そのためには当然、経営層が関わってくるわけで、
経営層が人事に積極的でないと、採用は成功に至れない という話につながっていくかと思います。
森實さんの講演は濃かったですね。
5. Repro 畑中さん
「口説いたら引かれた ~超えられない壁~」
ラスト! Repro の畑中さんです。主催などありがとうございます。
登壇資料はこちらです!(GitPitch のシェアURLはディレクトリ指定ができないっぽいので直接Markdownへのリンクです)
創業から2〜3年目、坊主と眼鏡のシニアメンバーばかりだったとき、
業務拡大に伴いコンサルを20名くらい採用する必要が発生しました。
その人数の経験者を採用するのは難しかったのでポテンシャル採用も含めた結果、
今度はその人達をマネジメントするマネージャーが必要となりました。
ここまででちょっと失敗してる気もしますが置いておいて、
今回はそのマネージャー採用に苦労した話です。
なんと驚きの圧倒的辞退率:90%!
これには会場の皆さんから笑いが。
ヒアリングをおこなってみると、大きく理由は5つに大別されるとわかりました。
- ビジネス領域の違い
- 経験したいフェーズの違い
- 年収
- カルチャーアンマッチ
- 家族の理解が得られない
1. 〜 3. はどうにもできないとして、
4. と 5. についてはコントローラブルと考え、改善することにしました。
どうも候補者としては、
- ベンチャー企業は結果が全て→悪かったら即座にひどいことになる
- 土日も当たり前のように働かなくてはいけない
- 妻から同様に「全ての時間が会社に取られる」という認識で、「仕事漬けなのに給料下がるし、ストックオプション本当にもらえるの?」などの嫁ブロック
という誤解があるようで、そこを説明。必要あらば奥さんにも説明。
そうして、採用に至れるよう改善していった、とのことでした。
会場からの質問では「口説き文句は?」というのがあがりました。
「『自分は会社のこういう良いところに惹かれて入社したんですよ』を言うと刺さる可能性が高い」というお答えでした。たしかにそうかも……
6. おわりに
懇親会もとても良かったですね。
採用担当の方が多いからなのか話し上手な方が多く、
非常に楽しい懇親会を過ごすことが出来ました。お食事もいっぱいありましたし。
Schoo の武井さんとお話して、適性分析の分野において
Schoo@me (2017/04設立)が大学との共同研究をしている話の子細を伺ったのは、最高に熱くて燃えましたね。
自分らしさを解析して、誰もが個性を活かせる社会をつくる | SchooMembers
まずベンチャーが R&D (研究開発)の子会社を作るって時点ですでにすごいですからね。
何を出してくれるか期待大です。
そして……
Hacking HR! #3 が 9/25 に開催されます!
ハッシュタグは前回同様 #hackinghrs です。
今回は私としては興味あるテーマではないので参加はしなさそうですが、
今後もぜひとも参加したい、とても良いイベントでした。
人事って最高ですね!
エンジニアが辞めない組織について本気出して考えてみた
いつもは技術系の記事ばかりですが、最近ビジネス書を読んで「なるほどなー」と思ったので、
エンジニアが居続けてくれる組織についてあれこれ考えてみます。
読んだ本↓
- 作者: 小山昇
- 出版社/メーカー: あさ出版
- 発売日: 2016/08/02
- メディア: Kindle版
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まだこの本しか人事本は読んでないので、この本の受け売りが多いです。(他の著者のをもう数冊読まなきゃね!)
あとは自分がエンジニアやっていて感じることからの感覚をミックスして。
0. 本の概要
さてさて、この本の概要ですが、一番言いたいところは
『人の成長なくして企業の成長なし』
ここに尽きると思います。
社員教育にお金と時間をかけられていない会社は、そのうち企業成績が頭打ちになるぞ、と。
社内で優秀な人を生み出せなければたしかに将来的にはそうなりますね。
「優秀な人を外から採ればいい」という考え方もありますが、現在社内にいる人との軋轢(あつれき)が生じたり、
この本にも書かれていますが、他社で業績を上げた人が必ずしも自社でパフォーマンスを発揮できるとは限りません。
それは、なにも転職者が経歴を大きく見せたとかいうわけでなく、
その人が優秀に見えるようにサポートした優秀な人が他社にはいたとか、
優秀な人が満足して働ける下地(社風、上司、資金体制)が自社にはないとか様々な理由があります。
この作者さんの会社は営業マンを育ててるので立場は違いますが、
「成長できない会社に居る意味はない」と考えるエンジニアとは利害関係が一致しそうですね。
「優秀になって会社辞めていく人いるじゃん!」というツッコミはありそうですが、
優秀な人を作らないよりはマシです。
教育をせずに優秀な人を1人も生み出さないよりは、
50人優秀な人を作って30人辞めていくことのほうが遥かに会社の未来が輝きます。
教育を受けたことを実感する人は会社に恩義を持ってくれますので、自社に仕事を持ってきてくれることや、社に再び戻ってきてくれる可能性だってあります。
1. 採用と教育
「辞めない組織」と考えると、職場環境の改善を考えてしまいますが、
そもそも採用に失敗している可能性があります。
たとえば、「優秀な人だけをとる」。
会社立ち上げ時に凄腕エンジニアを2〜3名確保する、というのはいいかもしれませんが、
3名前後揃ってきたなら、会社の理念に共感してくれ、未熟だけど素直でやる気にあふれてる人を1人は採るべきです。
まず、優秀な人は簡単に辞めます。
理由は単純で、優秀だからです。
他に働きどころはいくらでもあります。
そしてエンジニア業界は狭いので、
優秀な人が辞めると「あそこはあんまりいい会社じゃないかも」という印象が生まれます。(退職エントリが書かれることもありますし)
ですので、優秀な人だけをとらず、未熟な人を入れます。
そして、優秀な人達には未熟な人を教育してもらいます。
この教育には様々な効果があると私は考えています。
- 教える側が、知識の再確認ができ成長できる
- 人的マネジメントスキルのある人(リーダーに向く人)がわかる
- 母性本能の目覚め
最後アホなこと書きましたが、男女問わずいわゆる母性本能は多かれ少なかれあると思っていて、
人を育てていると、「この子の面倒は最後まで見なくちゃ」という気持ちが芽生える人がいます。
そうすると、優秀な人であれどその職場で働く特別な意味というのが生まれ、長く居着いてくれる原因につながる可能性があります。
この、「職場で働く意味」というのはとても大事で、
本の中ではコミュニケーションを密にすることで『職場が居場所の1つになっている』ことが辞めない環境づくりの1つの策だと書いてありますが、
優秀なエンジニアの居場所は多いです。ネットや他社との付き合いなど、居場所はありますしすぐに作れます。
自社で働く意味を持たせられる組織づくりがあるなら積極的にしていくべきでしょう。
教育する側と教育される側の密な関係がある組織というのは、
「フリーランスをするよりも会社で働くほうがいい」と思わせる大きな効果が望めるでしょう。
エンジニア人事としては、教育する側と教育される側のバランスが悪くならないよう、採用に気を付けるのもそうですし、
教育される側だった人が教育する側に回れるタイミングを見つけられるよう、教育する側の人たちのフィードバック、
教育する側に向いている人を知るために教育される側の人たちのフィードバックをとるなど、
各エンジニア間の相互フィードバックを見られるシステムづくりをしておくことも大事になります。
2. 優秀になる人を採る
さて、先ほど「会社の理念に共感してくれ、未熟だけど素直でやる気にあふれてる人」と書きました。
会社の理念に共感してくれる人を選ぶのは、長く居てもらうためです。
社長の考え方と大きくかけ離れている人は、いずれ会社の方針との衝突を起こします。
しかもプログラマーはロジカルに考えられる人が多いので、その人の意見にも筋が通っていたりして困ります。
これがコミュニケーションが密な職場で、かつ、社長と対等に話し合える職場であればいいのですが、
そうでない場合は新入社員の不満はどんどん溜まっていき、「いつか辞めてやる……」とストレスを抱えていきます。
社長は強い意志をもって方針を考えているわけで、それを簡単に曲げるわけもないので、人事としては会社の方針に共感してくれる人を優先的に採用するのが無難でしょう。
「イエスマンだけ採用しろ」と書いてるみたいで自分でも書いてて気持ち悪さはあるのですが、
ただ、会社の向いてる方向と違う方向を向いてる人が多くては会社はいっこうに進みませんし、
社長目線としては、会社の方針をしっかり理解してくれているポストがいなければ社長が抱えている業務を安心して任せられません。
そういうわけで、全てにイエスである必要はもちろんありませんが、会社理念には同意してほしいかな、というところです。
次の素直でやる気にあふれる人については、単純ですね。
教えがいがあるからです。
教える側になる人たちは教えることの専門家ではないですから、
モチベーションが保てなくなれば放棄します。
モチベーション維持となるのは、やはり結果が見えることです。
ですので人事は、教えがいのある人を採用してくるのが大切になりますし、
教える側の上の立場の人は、新人の成長を本人だけでなく教える側の人にも伝えてあげてください。
子どもの成長が褒められるのは、親として当然うれしいことです。
そして、素直でやる気にあふれる新人は、速いスピードで教える側へと成長を遂げてくれることでしょう。
3. 不満のキャッチアップ
この本……えっと、間が空いてしまったのでもう一度貼っておきます。この本ですね。
- 作者: 小山昇
- 出版社/メーカー: あさ出版
- 発売日: 2016/08/02
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
この本でこのような記述があります。
コミュニケーションが足りない職場では、最初は小さかった不満の種が、放置されることによって日に日に増幅していく。
その結果、「どうせ誰も自分を気にかけていないのだから、我慢する必要はない」と辞めてしまう。
十中八九、このパターンです。
> それな <
という気持ちです。
本当にこれです。
別れるカップルと同じです。
不満へのケアが足りていないと、しだいに「不満あつめ」をしだします。
最初は「△△がイヤ」という不満だったのが、
時間が経つと「△△がイヤだし、▽▽もいけてないし、××もダメ」とどんどん嫌なことが目についていきます。
友達に相談したら当然「えー、それならもう辞めちゃいなよ」ということになりますし、
自問自答でも「辞めるしかない」という結論に達するので、辞職の意志が固まります。
辞めることを決意したあとでは、それの理由付けのためにますます「不満あつめ」は加速していきますし、
その状態ではもう上司の「辞めないでよ」という声は厚い壁に阻まれてちっとも届きません。
辞職願を出されてからではもう遅いのです。
大切なのは、常に不満へのケアが出来ることです。
必ずしも改善まで結びつく必要はありません。聞いてあげるだけでも大きく違います。
では、不満を常に言ってもらえるようにするにはどうすればいいかという点については
密なコミュニケーション。これに尽きると思います。
本の中では質も大事だけどそれ以上に量が大事としており、
上司が部下とのコミュニケーションを積極的にとるような仕組みづくりについても触れられています。
本の中では飲みニケーションを仕組み化している点が記述されていますが、
なにもお酒を飲むことに限らず、(飲めない人もいますし)
おいしい料理を食べることや一緒にゲームをすることでも気はゆるみますので、
そういう機会を多く設けることが有効でしょう。
社内の人とのランチ補助制度や、部活制度を設けてる会社がありますが、
こういう狙いだったんだなと気付き感心しました。
『優秀な技術者を追い出してしまう方法』という記事がありましたが、
これらは具体的すぎる内容でどの会社でも等しく起こる問題ではないですから、
会社としてまずおこなうことは、コミュニケーションを密にして上司が部下の不満を常にキャッチアップできる環境づくり、というところでしょう。
その上で、記事にあるような不満が出てくるかもしれませんが。
コミュニケーションの数、そして、気がゆるんでなんでも話せる場(お酒だったりおいしい食事だったりゲームだったりがある場)の用意、
あとは「最近なんか困ってることある?」と聞くようにすれば、自然と不満をキャッチアップできるようになっていくことでしょう。
最初は部下は遠慮するでしょうが、回数を重ねて少しずつ壁がなくなればよいかと思います。
4. おわりに
以上、『辞めない採用、即戦力の育成で儲かる会社になる!』(著:小山昇)を読んで
自分なりにまとめてみた意見でした。
この本とても良くて、1000円ちょっとで買えるのに、
など、網羅的な人事の考え方を実例とともに読みやすい文体で書いてあって良書だなと感じました。
もちろんあくまで一人の考え方をまとめた本なので全てを鵜呑みにするのは良くありませんが、
なかなか説得力のある発言にあふれていました。
エンジニア採用の現場ではよく「優秀な人(=即戦力を指す)に来てもらいたい」なんて声を耳にしますが、
本当にそれでいいの? 新人教育って必要ないの? など考えるところはいくつかあったので、今回の記事で考えをまとめられてよかったです。
話の流れで入れられなかったのですが、私の考える「優秀な人」は情報共有の出来る人です。
どれだけプログラミングが出来る人でも、会社は組織立って動くところですから情報共有をしてくれないと困ります。
勝手に実装進めてたけど、他の人がプルリク見て初めて、急ぎでない用件のほうを実装してたことがわかるとかは困ります。
なにも情報共有されていないと、その人が辞めたあとによくわからないコードの山が残ります。
逆にプログラミングが多少できなかろうと、悩んでいることを共有してくれるのなら周りはアドバイスができます。
どうしたら情報共有の出来る人って採用できるんだろうと考えちゃいますが、
ひとつは伝達力を測ることでそれを望めるのかなと思ったりはします。
たとえば「バナナとはなにか説明してください」のような、ふだん説明しないようなものの説明を、
多すぎないしゃべりで、的確に表現できる人は情報伝達力が高いなと感じます。
いろいろ考えてみましたが、
人事というのはなかなか最適解がなくて、プログラマーよりよっぽど難しい職業のようです。大変面白いですね。